仕事観 「音をデザインする」

クリスタルボウル奏者(くりすたり庵)

人・モノ・食
世の中には、さまざまな仕事や働き方があります。そこで多種多様な職種の人たちにスポットをあて、仕事について訊く本連載「仕事観」。第4回は、クリスタルボウルという楽器を使ってサウンドヒーリングを奏でるクリスタルボウル奏者の杉本直之さん。杉本さんにとって仕事とはなにかを伺いました。

 

――クリスタルボウルの演奏聴かせていただきました。
不思議な音でしょ。

――とても心地よくて聴くたびにねむくなってしまいました。
ねむくなるのは、同調化現象と呼ばれるものです。
クリスタルボウルはどことなく懐かしさも感じることがあると思うし、親しみやすい。心地いい音楽だと思うんですよ。波の音や風の音、鳥がさえずる音と一緒で、地球のリズムを感じることができる。

実は、日本古来の楽器と似ているところがあって。自然界には調律されていない音(音のうねり)がたくさんあって、そこに数字的に調律されたほどよい音が合わさった時、人は心地よさを感じると言われています。

けれど、対照的にクリスタルボウルって最先端の技術で作られているものなんですよ。水晶でできているのだけれど、もともとは半導体のチップを作るための材料(シリコンウェーハ)を作るための器としてアメリカのシリコンバレーで開発されたものだったんですよ。

本来コンピュータを作るための道具にすぎなかった。で、ある時叩いてみたらすごくいい音がするということ発見して、楽器的にもっといい音を出すにはどうしたらいいか。というところからクリスタルボウルというものができたんですよ。

今でも半導体チップを作るための道具として使用されています。材料はかなりの高温なので水晶の容器が耐久性としてはとても高いものです。99%水晶なので音としては単純な音しかでないので、楽器としてもっと音が揺らいだりとか伸びたりだとか心地よい倍音を出すにはという別のベクトルで開発が進みました。

まだクリスタルボウルという楽器としての歴史は40年と浅いんですよね。

――そんなに浅いんですね。独特な音色。存在感がすごいです。
ですよね。クリスタルボウルもそうですが、楽器のもってる力ってすごいなって思うんです。出発点として音楽にはまず響きがそこにあること。響きっていうのは空気振動であって空気振動をどういうメカニズムで与えるか。それがどういうふうに魂に、心の奥深くに響くか。響かせることができるのか。それは、楽器や楽器を使う人のエネルギーだと思うんですね。

――演奏するうえで大切にしていることは。
自分の気持ちが入ってきてしまうとつまらなくなってしまう。変に癒してやろうとか、心地よくさせてやろうではなくて、この場所の空気感に合わせて奏でることが大切だと思うんですよね。

――クリスタルボウルとの出会いは。
僕は、以前東京の会社でイベントなどをプロデュースする仕事をしていました。ちょうど、年齢としても管理職という立場に差し掛かり現場にでれなくなるなぁってときに、自分の人生を見直すというかシフトチェンジしたいなって思ったんです。

それで以前から知人を介して紹介してもらったクリスタルボウル奏者でくりすたり庵の代表である牧野持侑さんとの出会いがあってクリスタルボウルを知りました。南伊豆にサウンドヒーリングをやっている人がいるんだなって驚きましたね。とても興味深かった。とにかく自然豊かで住みやすそうだし南伊豆に移住することにしました。

――移住するとなると仕事はどうしたんですか。
WEB制作や広告などのデザインができたので、とりあえずはそれで生計を立てようと思っていました。ちょうどそのタイミングでくりすたり庵の牧野からイベント用にチラシのデザインの依頼を受けたことから関係が深まりましたね。

――なるほど。そこからどのようにしてクリスタルボウル奏者に。
最初は、僕がギターを弾きながらのセッションライブをしたり。それから、牧野が東京タワーの目の前にある増上寺で定期的にコンサートをやっていて、そこではじめてクリスタルボウルを一緒にやらせてもらいました。

ここがクリスタルボウル奏者としてのデビューとなりましたね。それで音楽プロデューサーの方がレコーディングしようって。トントン拍子にCDデビューって感じになりました。

――いきなりCDデビューってすごいですね。初デビューの時は練習はしたんですか。
もちろん。コンサートに向けて猛練習しましたよ。ただ、クリスタルボウルの演奏は日頃から聞いていたし、ハーモニーだからフォローしてもらいながらだったのでよかったのですが、ひとりだったらできませんでした。

――杉本さんの音楽に対する感覚的なところもあったのでしょうか。
んーどうですかね。でも、昔から音楽に携わった仕事もしていたし、バンドもやっていたしそういう面では音楽とは生活の一部にあったからなんとなく感覚でできたところもあったのかなと思います。

――仕事楽しいですか。
楽しいですね。サラリーマンやっていたころに比べたら収入は減ったけど自由だし、心の充足感が増えましたね。けれど、サラリーマン時代の時はたくさん勉強させてもらっていたし、会社の看板を使っていろんな経験をさせてもらえたのでほんとうに良かったと思います。職場は東京のど真ん中だったからとにかく刺激的だったし学べることがたくさんありましたね。

ミュージシャンであるけれどなんでも屋
まち暮らしの百姓

――仕事とはなんですか。
前職ではマーケティングをやっていたんですが、将来自分で商売しようと考えたときに必ずデザインは必要だと思っていたんですね。今もデザインの仕事はしていますが別にプロのデザイナーを目指すわけでもなく、デザインはツールのひとつとしか考えていなくって。

ただ、ミュージシャンではあるけれどデザインもやるし何でも屋って感じですかね。むしろ何でも屋であったほうが面白いのかなって思っていて。まち暮らしの百姓ですかね。とにかく自分のもっているツールを使って人の役に立てることだったらなんでもしてあげたい。

自分を定義するのはむずかしいですが、自分のアイディンティティとしてはミュージシャンです。

――今後の自身の展望、目標をおしえてください。
クリスタルボウルってかなり独特の世界だし、まだまだハードルが高いイメージがあるように感じるので、ピアノだったりギターを取り入れながら人々が馴染みやすいBGMとして聞いてもらえるような音を作っていきたいと思います。

また、現代は睡眠障害の人も多いですし、そういう人たちにも聞きやすいものも提供していきたいと思っています。

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プロフィール

杉本直之 Naoyuki Sugimoto

くりすたり庵

クリスタルボウル奏者、ギター奏者
2004年に移住した南伊豆でクリスタルボウルを主体にしたサウンドヒーリングの『くりすたり庵』に参加したことをきっかけに、楽しみ「聴く」音楽から心と体に「効く」音楽という意識が加わり、活動の場を広げる。現在は拠点を浜松市に移し、ヒーリングセッションやヨガとのコラボの他、クリスタルボウル奏者の牧野持侑とのユニット「Crystalian」をはじめ様々なスタイルのユニットに参加し、各地で演奏活動を行っている。
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